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道路の長ネギ

 

 

 

 道路に長ネギが落ちていた。一本だけ。

 

 

 

 これが長ネギじゃなくて犬の糞だったらなんて事はない。よくある事で片付けられる。でも長ネギだ。他でもない長ネギ。アスファルトに一本、長ネギが落ちている状況を僕の脳ミソは処理しきれない。そこに長ネギがあるという事には何かしらの理由があって、通りすがりの僕には、もうその理由を知る術はない。

 

 理由を知る術がない以上、想像力でなんとかするしかない。

 

 こういう時は、僕の頭の中カンパニーで雇っている小さいおじさんが、頭の中サミットを開催する。「演出家」「構成作家」「ハイパーメディアクリエイター」「スーパーエグゼクティブプロデューサー」「パーティーオーガナイザー」「スティーブン・スピルバーグ」。全員メガネをしている。

 あーでもないこーでもないと、アスファルトに長ネギが存在するに至った経緯や、そこから展開されるストーリーを話し合うが、納得のいくものはなかなか出てこない。

 

 

 

ーラブコメの場合ー

 

 買い物帰りの千代子は、今晩食べる湯豆腐の材料を買い物袋にいれて、いつもの道を歩いていた。何を考えるでもなく、ただ漠然と歩みをすすめるその様子は、千代子の人生そのもののようだった。

 

 「奥さん、長ネギを落としましたよ。」

 

 振り返るとそこには、20代前半だろうか、整った顔立ちの青年が立っていた。長ネギを持って・・・・・

 

 

 

 

 

 ラブコメと呼ぶには生活感がありすぎるのでボツだ。長ネギから始まる恋というのもどうかと思う。

 

 火曜サスペンスなら、長ネギがダイイングメッセージにでもなっていて、緑の部分が向いている方向にある家の主人が犯人といったところだろうか。ボツだ。SFなら、長ネギの横にあるボタンを押すとライトセーバー的な、ビームサーベル的な武器になり、ゆくゆくは宇宙戦争に巻き込まれる感じだ。ボツ。

 

 どうころんでも駄作になるであろう事は理解出来た。

 

 

 

 

 

  ストーリーを考えることを諦めた頭の中サミットでは、今晩の夕食を何にするかが議題になっていたが、「長ネギが沢山入ったお鍋が食べたいな」という事で全員の意見が一致したとさ。

 

 

 

 

 

 

 しょうもないのでおわり。